さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

2019-01-01から1年間の記事一覧

ハワード・ホークスの佳作『赤い河』

ハワード・ホークスは西部劇の巨匠というイメージがあるが、思いの外少なくて、以前に紹介した『リオ・ブラボー』のほか、『リオ・ロボ』、『エル・ドラド』、『赤い河』くらいである。しかしいずれも傑作、神話といってよいものだ。bosszaru21.hatenablog.c…

『掠奪の町』グレン・フォードとウィリアム・ホールデンがやたら若い

昔スターチャンネルに加入していたころに録画していたのが残っていたので観た。略奪ではなく掠奪であり、街ではなく町である。とりたててどうこういうような作品でもないのに、スターチャンネルは芸が細かいね。本作は南北戦争に敗れた二人の若者が、一人は…

ジョン・フォード騎兵隊三部作の三本目『リオグランデの砦』

さて先日の黄色いリボンに続いて騎兵隊三部作いってみよう。bosszaru21.hatenablog.com 本日は『リオグランデの砦』である。前2作に比べるとずいぶん暗い内容であり、前作よりもさらにホームドラマ色が強くなっている。 メキシコ国境付近の砦でジョン・ウェ…

ジョン・フォード騎兵隊三部作の二本目『黄色いリボン』

さて先日のアパッチ砦に続いて騎兵隊三部作いってみよう。bosszaru21.hatenablog.com 本日は『黄色いリボン』である。ストーリーは退役まで残すところ6日となったジョン・ウェイン演じるネイサン中尉を描くものである。 リトルビッグホーンの戦いで第7騎兵隊…

ジョン・フォード騎兵隊三部作『アパッチ砦』

西部劇は1970年ころからジャンルとしては終焉しつつあり、『ソルジャー・ブルー』はその象徴ともいうべき作品であった。bosszaru21.hatenablog.com これからしばらくはそういう楽しくない西部劇のことは忘れて黄金時代の作品について書いていきたい。とりあ…

ある意味西部劇を終わらせた問題作『ソルジャー・ブルー』

先日はアメリカ先住民に親和的な西部劇『小さな巨人』について紹介した。bosszaru21.hatenablog.com1970年製作の『ソルジャー・ブルー』もベトナム戦争におけるソンミ村虐殺事件への痛烈な批判である。題材は悪名高いサンドクリークの虐殺である。私がこれを…

プロインディアン映画の到達点『小さな巨人』

1970年製作の『小さな巨人』はアメリカ先住民の文化を好意的に取り上げる西部劇のひとつの到達点であるとともに、アメリカン・ニューシネマの傑作でもある。お話は121歳の老人ジャックの昔語りという形で始まる。少年のジャックは平原を家族とともに馬車で移…

西部劇の終わりを感じさせる『11人のカウボーイ』

今日は1971年製作の『11人のカウボーイ』の話をしよう。もう西部劇はジャンルとしては衰退に向かっていることが明白な時期であり、西部劇のスーパースターであるところのジョン・ウェインが途中で惨殺いうちょっと前ならありえない展開になることで有名な作…

ペキンパー&マックイーンの『ゲッタウェイ』は銃撃戦満載の逃亡劇ふうな西部劇だった

スティーブ・マックィーンはサム・ペキンパーと『ジュニア・ボナー』で素晴らしい仕事をした。興行的にはふるわなかったが、好事家の評価は高い。bosszaru21.hatenablog.com これに引き続き、これまたアクション映画の金字塔『ゲッタウェイ』でペキンパーと…

ペキンパー&マックイーンの『ジュニア・ボナー 華麗なる挑戦』

サム・ペキンパー監督の『ジュニア・ボナー』は1970年ころのアリゾナ州を舞台にしており本来の意味での西部劇ではないけど、マックイーンつながりということで取り上げておこう。雰囲気としては『トム・ホーン』』と『砂漠の流れ者』をブレンドした感じかな…

スティーブ・マックィーンの実質的遺作『トム・ホーン』は優れた挽歌西部劇だった

さて前回に続いてスティーブ・マックィーンの西部劇にいきましょう。bosszaru21.hatenablog.com前回は1966年の『ネバダ・スミス』だったが、すでに神話の時代の西部劇と異なりインディアンは敬意を払うべき人々になりつつあった。『トム・ホーン』は1979年の…

スティーブ・マックィーンの数少ない西部劇でありプロインディアン映画の萌芽たる『ネバダ・スミス』

先日はせっかくスティーブ・マックィーン出演作を紹介したので続いてマックイーンでいこう。bosszaru21.hatenablog.com 『ネバダ・スミス』はマックイーン演じる主人公が、白人の父とインディアンの母を惨殺した3人の男を年単位で追い詰めるというものである…

ジョン・スタージェス『荒野の七人』はややチャラい西部劇である

先日に続いてジョン・スタージェスをもう一ついってみよう。bosszaru21.hatenablog.com スタージェスは1950年代後半に『OK牧場の決斗』、『ガンヒルの決斗』、『ゴーストタウンの決斗』の決斗三部作を監督し、アクション作家としての名声を確立した。そして…

訃報 八千草薫さんとロバート・エヴァンス

昨日、今日と偉大なる映画人の訃報に接したのでブログに書いておく。 一人目は八千草薫。彼女の出演作はいくつか観ているが、断トツに印象に残っているのが『ガス人間第一号』である。 高校生の頃、ガチのサイキッカーだった私は竹内義和氏推奨ということで…

ラグビーワールドカップなのでクリント・イーストウッドについて

ラグビーワールドカップで盛り上がっているので、クリント・イーストウッド『インビクタス』を当然のごとく思い出した。1995年ワールドカップ南アフリカ大会における南アフリカ代表の活躍と、ネルソン・マンデラ大統領の願う国内の宥和を重ね合わせるという…

神話の時代の西部劇『OK牧場の決斗』

先日はついにジョン・スタージェスを紹介してしまったので、続けてスタージェスでいこう。bosszaru21.hatenablog.com 戦後から1960年くらいまでが西部劇の黄金時代であり、その中には内容も人気も抜群の、もはや神話とでも呼ぶべき作品がたくさん存在する。…

ジョン・スタージェスの小品『六番目の男』

先日は悪人顔の代表格リチャード・ウィドマークによるプロインディアンな西部劇を紹介した。bosszaru21.hatenablog.com というわけで続けてウィドマークの出演作について書いてみる。ちなみにインディアンもでてくるよ。 ヒラバレーという谷でかつて5人の白…

プロインディアン映画の萌芽としての『襲われた幌馬車』

こないだ書いたジョン・ヒューストン、バート・ランカスター、オードリー・ヘップバーンの『許されざる者』(1959)は、拾われたカイオワ 族の娘の奪い合いという設定ながら、まだインディアン(先住民)はたんなるやっつけるべき人々という扱いであった。bossza…

プロインディアン映画とはまだいえない『許されざる者』

先日、ジョン・ヒューストン監督の作品を紹介したので続けてもう一つ。bosszaru21.hatenablog.com クリント・イーストウッドのそれと紛らわしいのだが『許されざる者』である。ちなみにヒューストンのは”The Unforgiven”で、イーストウッドは”Unforgiven"で…

挽歌西部劇の佳作『ロイ・ビーン』

ポール・ニューマンに言及したところなのでもう一つ1970年代のポール・ニューマンの西部劇について書いておこう。bosszaru21.hatenablog.com 1972年の『ロイ・ビーン』は、実在のアウトロー判事をモデルにした作品だ。開拓期の西部には警察も裁判所もろくに…

新世界に久しぶりにいったのだ

今日は15年ぶりに新世界へ行った。基本的にIngressしてただけだっのだが。 とはいうものの、くら寿司に入りそうになるのを我慢するのが大変ではあった。 なんとなく新世界東映の前を通った。学生の頃はここと飛田東映でヤクザ映画を見まくっていた。 飛田東…

明日に向かって撃ちたかったあのころ

『明日に向かって撃て』は1900年ころに悪名を轟かせたブッチ・キャシディとサンダンス・キッドのお話である。1900年ころはもう西部開拓はとうに終わっており、昔風のアウトローは時代遅れになっていた。そういう気分はこの映画が製作されて1969年のアメリカ…

『イージー・ライダー』の続編『さすらいのカウボーイ』

アメリカン・ニューシネマの大成功作品である『イージー・ライダー』からいくつかの傑作が派生した。ジャック・ニコルソンが引き継いでよりコンテンポラリーな主題へと引き寄せたのが『ファイブ・イージー・ピーセス』であり、ピーター・フォンダ監督主演で…

サム・ペキンパー最初の西部劇『昼下がりの決斗』

サム・ペキンパーは5本の西部劇を撮っている。bosszaru21.hatenablog.com bosszaru21.hatenablog.com bosszaru21.hatenablog.com 本日は4本目である『昼下がりの決斗』である。本作は映画監督デビュー前のテレビ時代を除けば、ペキンパーの最初の西部劇であ…

ビリー・ザ・キッド meets サム・ペキンパー『ビリー・ザ・キッド21歳の生涯』

サム・ペキンパーについてさらに書いていきます。bosszaru21.hatenablog.com bosszaru21.hatenablog.com ビリー・ザ・キッドは19世紀末のアメリカのアウトローで、フロンティアが消滅した西部で、事業家タンストールにガンマンとして雇われ、リンカーン郡戦…

ペキンパーの闇雲にセンチメンタルな一作『砂漠の流れ者』

先日からサム・ペキンパーについて書き始めたわけであるが、『ワイルドバンチ』のような流血が一つの特徴といえるが、必ずしもそれだけではないのだ。 bosszaru21.hatenablog.com 時代遅れになっていく男たちが主要なテーマであるからして、どうしてもセンチ…

時代に取り残された男たちを撮り続けたサム・ペキンパーの傑作西部劇『ワイルドバンチ』

先日、1970年ころから出現したオルタナティブな西部劇について少し紹介した。このジャンルは僕が西部劇の中で最も好きな作品をたくさん含んでいる。bosszaru21.hatenablog.com そしてこの分野に多大なる貢献をした映画監督がサム・ペキンパーである。 ペキン…

失われた西部ものの佳作『モンテ・ウォルシュ』

西部劇は山ほど見てきたが、それでもまだ見ていないのはまだまだあって、その中には重要な作品もあったりする。 先日、TSUTAYAでなんとなく借りた『モンテ・ウォルシュ』(1970)もそうだ。1970年ころになると、ベトナム戦争を背景とした厭世観、強いアメリカ…

黒部ダムにいってしまったのだ

先日『黒部の太陽』を見直したのは黒部ダム初訪問のためだった。 そして今日ついに行ってきたのだ。黒部川は北アルプスのまんなかを走っていて両岸は3000m級の急峻な山々が位置している。なのでダムを作れば貯水量と落差を稼げるということで大正期から開発…

『黒部の太陽』はめちゃエモい映画だった

1968年日活製作。戦後の一大事業である黒部第4ダム建設にまつわるドラマ。 関西電力は関西地区の電力不足に対応すべく黒部川上流にアーチ型の大ダム建設を予定する。切り立った峡谷は貯水量、落差ともこれ以上ない立地であった。しかしそれ故に資材の搬入が…