さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

ジョン・スタージェス『荒野の七人』はややチャラい西部劇である

先日に続いてジョン・スタージェスをもう一ついってみよう。

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スタージェスは1950年代後半に『OK牧場の決斗』、『ガンヒルの決斗』、『ゴーストタウンの決斗』の決斗三部作を監督し、アクション作家としての名声を確立した。そして満を持した放ったのが1960年の『荒野の七人』である。これはよく知られているように、黒澤明の最高傑作『七人の侍』のリメイクである。もちろん世界の映画史に燦然と輝く『七人の侍』にかなうわけがないのだが、それでもこれはこれでメチャクチャ面白い西部劇なのである。

ストーリーはオリジナルとほぼ同じで、盗賊に悩まされる農民たちがガンマンを雇い自衛するというもの。黒ずくめスキンヘッドのユル・ブリンナー(彼が『七人の侍』に惚れ込み製作した)がまず村人に依頼を受け、ガンマンを募っていく。ブリンナー以外の6人はいずれも成功への登竜門にさしかかっている若手俳優たちである。村へやってきた7人は野盗たちを倒していく。いちおうロマンスとか裏切りとかいろいろあるし。有名な「勝ったのは農民だ」というセリフも出てくる。



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見所は、やはり若い6人のかっこよさ、男気、流麗なアクション、エルマー・バーンスタインの勇壮なメイン・テーマといったところだ。


荒野の七人 <特別編> (The Magnificent Seven)


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キャラクターの描き分けが『七人の侍』に比べて弱いのだが、そこは俳優たちの個性で乗り切っている。

製作者であり7人のリーダー的な役柄、つまり志村喬ポジションのユル・ブリンナーだが、存在感はさすがであるもののやや押され気味。撮影中はマックイーンの人気に嫉妬していたともいわれる。

最初に仲間に加入するスティーブ・マックィーン加東大介的な立ち位置だろうか。ジョン・スタージェスの『戦雲』に出演して実力を認められ本作でも準主役に抜擢される。ジョン・スタージェスとはこの作品の後に『大脱走』でも仕事をしてついに大スターとなった。本作では寡黙だがシャープなガンマンを演じている。

ジェームズ・コバーンも本作で名を上げた1人。飄々としつつも求道者のようなガンマンで、オリジナルの宮口精二に相当する。彼も『大脱走』に出演し、スターダムを駆け上がることになる。

チャールズ・ブロンソンは薪割りをしているところでスカウトされるところが千秋実っぽい。容貌どおりの無骨なキャラでありながら村の子供たちに慕われる。彼らが父親たちのことをずるい農民だとバカにしたとき、お前たちの父さんほど勇敢な人達はいないと叱責するシーンはあまりにも有名。彼も『大脱走』に出演し、ブロンソン大陸の伝説へとつながっていく。

ロバート・ヴォーンはオシャレで腕が立つが、過去に殺した人間が夢に出てきてノイローゼになっている賞金稼ぎを演じた。しかし最後の決戦で男気を見せる。彼は本作の後は『ナポレオン・ソロ』など主にテレビで活躍することになる。映画ではマックイーンと共演した『ブリット』での嫌味な政治家が印象深い。

ホルスト・ブッフホルツは村の娘と恋に落ちる木村功の立ち位置と、農民出身であり最初は仲間入りを断られるが無理やりついていくという三船敏郎のそれを兼ねた役を演じる。スタージェスはロマンスを描くのは下手とよく言われるが、本作でも唐突な演出で笑わせてくれる。ブッフホルツはその後にハリウッドで大活躍することはなかった。ロベルト・ベニーニの『ライフ・イズ・ビューティフル』に出演していたらしいが、どこにいたか忘れた。

マックイーンらほどは出世しなかったハリー・デクスターだが、本作では一本筋の通ったキャラクターを演じた。