さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

挽歌西部劇の佳作『ロイ・ビーン』

ポール・ニューマンに言及したところなのでもう一つ1970年代のポール・ニューマンの西部劇について書いておこう。

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1972年の『ロイ・ビーン』は、実在のアウトロー判事をモデルにした作品だ。開拓期の西部には警察も裁判所もろくにないから住民が自分たちで治安を守るしかない。そういう時代にはワイアット・アープのようなアレな保安官もいるし、ロイ・ビーンもそういう判事だったようである。

ポール・ニューマン扮するロイ・ビーンは私怨からある町にやってきてならず者たちがを皆殺しにしてしまう。そして酒場を裁判所にしたてて自分が判事だと居直ってしまうのである。さらに別のならず者たちを保安官として雇ってやりたい放題である。牧師(『サイコ』の印象が強すぎるアンソニー・パーキンスが演じる)が諌めるが当然聞く耳を持たない。

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もちろんそんなことが長続きするはずもなく、ビーンは街を去ることになる。こういう感じで時代についていき遅れた男を描くのが1970年ころから流行った挽歌西部劇である。もっとも本作はビーンがやりたい放題したり、憧れの女優が街にやってきたのに劇場に入れてもらえないビーンとか、楽しくユーモラスな場面も多く、ラストにも仕掛けというかカタルシスが用意してあるので過剰に湿っぽくはないのだが。そしてビーンとメキシコ人女性とのロマンスはうっとりする。

ジョン・ヒューストンは多作な映画監督であり、ニューマンとは『勝利への脱出』、『マッキントッシュの男』を撮っておりいずれも佳作である。西部劇は意外と少なくて本作と『許されざる者』(クリント・イーストウッドでないほう)くらいしか印象的なものがない。

ビーン娘役はジャクリーン・ビセットなのだが、本作ではお色気要素が少なめで凛々しさを全面にだしている。

脚本はジョン・ミリアスだが、今調べたらB級でないのは本作と『地獄の黙示録』くらいなんだな。でも構成は上手い。

挽歌西部劇といわれるジャンルのなかでも、しみじみと西部劇の終わりを語る本作は『砂漠の流れ者』と双璧をなす。ぜひ沢山の人に見てほしい作品だ。