さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

サム・ペキンパー最初の西部劇『昼下がりの決斗』

サム・ペキンパーは5本の西部劇を撮っている。

bosszaru21.hatenablog.com


bosszaru21.hatenablog.com


bosszaru21.hatenablog.com


本日は4本目である『昼下がりの決斗』である。本作は映画監督デビュー前のテレビ時代を除けば、ペキンパーの最初の西部劇である。まだゴアとスローモーションというスタイルは確立されていない。

ジョエル・マクリーとランドルフ・スコットという初老の俳優を起用して
時代に取り残された男感を演出するスタイルはすでに確立されている。とくにスコットは数々の西部劇に出演してきた名優である。マクリー演じる老ガンマンが銀行の金輸送を請け負い、かつての仲間のスコットとその弟子の若者と鉱山に向かう。途中で立ち寄った農家の娘は、聖書狂いの父に嫌気がさして、恋人のいる鉱山へと彼らともに行く。

f:id:bosszaru21:20190927224454j:plain

鉱山につくと娘は恋人と結婚式をあげる
が、そこで恋人の兄弟たちにいきなり襲われそうになる。このシーンの娼館の女将のマツコ・デラックスをさらに異様にした容貌、ウォーレン・オーツとL・Q・ジョーンズのペキンパー組の常連のゲスさはペキンパーらしてたまらない。ファンならいきりたってしまうところである。

マクリーらはなんとか娘を救い出して鉱山を降りて街に向かうが、娘の実家でオーツらに待ち伏せにあう。万事休す、しかしスコットとマクリーは昔のように正面から行こうぜと立ち上がって、悪党のひそむ建物に向かう。堂々と打ち合おうと挑発すると、信じがたいことにそれにま正直に呼応して姿を現す。こうやって悪党すらも可愛らしく描くのがペキンパーらしい。そして両者、遮蔽物のないなか銃を乱射するのだ。この場面がなんとも美しいし、男臭くていい。イーストウッドの『許されざる者』は本作にオマージュを捧げたといわれるがこのシーンのことであろうか。

下のDVDボックスはこれまで紹介したペキンパーの4本の西部劇をおさめたお得なセットである。ペキンパーは『昼下がりの決斗』と『ワイルドバンチ』の間に『ダンディ少佐』というちょっと評価が微妙な作品を撮っているのだがそれはまたいずれ書きたいと思う。