さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

エンニオ・モリコーネ個人的ベスト5

著名な映画音楽家であるエンニオ・モリコーネ氏が先日亡くなられた。享年91歳。

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モリコーネは1928年にローマに生まれ、1960年ころからマカロニウエスタンを中心に音楽を提供してきた。いまフィルモグラフィーを見ているがその数は膨大でジャンルも多岐にわたっている。140本くらいあるうち30本くらいしか観ていないが、映画として面白く、かつ音楽も印象に残っている5本を紹介したいと思う。

では第5位から。

ニュー・シネマ・パラダイス


日本でもっとも馴染みのあるモリコーネ作品ではないだろうか。映画監督として大成した主人公が、かつてお世話になった故郷の映写技師の葬儀に出席するのであるが、帰郷の途上で少年時代を回想するという設定である。こういった過去を回想する形式の物語とモリコーネは最高にマッチするのである。
モリコーネは本作品以降、『海の上のピアニスト』や、モニカ・ベルッチ出世作マレーナ』など、ジュゼッペ・トルナトーレ監督に大量に楽曲を提供した。


ノスタルジックな気分に浸りたい人におすすめ。


殺しが静かにやってくる




続いて4位。かなり初期のマカロニ・ウエスタンである。監督は巨匠セルジオ・コルブッチで、モリコーネはコルブッチにかなり音楽を提供した。寒村で野盗のいいなりになる村人らを声の出ないガンマンが守るという設定である。主人公のジャン・ルイ・トランティニヤンの悲しげな表情、マカロニとしてはありえない悲劇的な結末モリコーネの音楽は最高の組み合わせであり、強引に涙を搾り取ってくることであろう。また悪党の親玉クラウス・キンスキーのクズっぷりもいい。

というわけで世の中なんてひどいんだ、終わってるという気分になりたいかたにおすすめです。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ


ここでようやくセルジオ・レオーネ監督の登場である。レオーネは言わずとしれたマカロニの巨匠であり、コルブッチ以上にモリコーネと縁が深い。
本作は1984年に製作された、ワンスアポンアタイム三部作の3作目である。
物語は、かつてNYのユダヤ系マフィアの幹部だったロバート・デ・ニーロは仲間を裏切ったために現在は名前を変えて田舎で生活している。そこへ誰かから仕事の依頼がありNYへ舞い戻る。現在と過去を行ったり来たりしながらストーリーは進行していく。繰り返しになるが、モリコーネの音楽はこういう展開と非常に相性が良い。
なんといってもこの時期のデ・ニーロは油が乗り切っていた。『ディア・ハンター』、『レイジング・ブル』、『ゴッドファーザーPART2』など。本作でも渋すぎる演技を披露する。またかつてのマフィアのリーダー格であり良き相棒であったジェームズ・ウッズも鬼気迫る演技をみせる。


そして過去に固執するウッズと、過去は過去として処理している(しかし大事な思い出として心のどこかにしまっている)デ・ニーロの対比が、モリコーネのメロディーによって際立っていくのだ。

あとどうでもいいけど若いジェニファー・コネリーがめちゃかわいいです。

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もっとどうでもいいことですが、落合信彦大先生のおすすめでもあります。

これまたロマンティックな気分に浸りたいかたにおすすめ。

ミッション


またしてもロバート・デ・ニーロだ。
南米で布教に勤める宣教師たちと、先住民を奴隷として使役したい本国との間での揉め事についてのお話である。
18世紀後半、現在のブラジルとパラグアイ国境付近に住むグアラニー族を教化しようとジェレミー・アイアンズ神父は奮闘していた。
一方、奴隷商人のロバート・デ・ニーロは三角関係のもつれから弟を殺してしまい罪の意識から、アイアンズ神父に帰依し、信仰の道に生きることを決意する。
彼らは、アマゾンの奥地に理想郷を建設するが、これがローマ教皇庁の反感を買い、またスペイン・ポルトガル国境問題もからみ、退去を命じられる。しかしアイアンズはこれを拒否、先住民らは絶望的な戦いへと向かうことになる。
力で解決しようとするデ・ニーロと、信仰によって先住民らを導こうとするアイアンズの対決が熱い。基本的には退屈なストーリー展開なんだけど、衝撃的なラストで、観衆はデ・ニーロかアイアンズか、どちらが正しかったのか知ることになる。そこにドーンとモリコーネの音楽がかぶってきて感動を盛り上げるのである。
あまり有名な作品ではないけど、いちおうパルムドールとってる。

信仰とはなにか、良く生きるとはなにかと考えたい人におすすめである。

そして個人的にはこれがジェレミー・アイアンズのベストロールだと思っている。後年に彼は『ロリータ』で変態中年キャラを確立してしまうのだが、これも音楽はモリコーネだったりする。本当に色々なジャンルに手を出しておられた。
デ・ニーロは全盛期なのでさすがである。有名な滝登りのシーンは宣教師たちの布教への執念を感じさせる名シーンである。
リーアム・ニーソンやアイダン・クインはこのころには主役はれるくらいの俳優だったはずだが、主演二人の前に霞んでいるというか遠慮がちなのはややもったいないかも。
監督のローランド・ジョフィは本作よりも、アカデミー賞を受賞した『キリングフィールド』のほうが有名かもしれない。また原爆をあつかったために日本未公開の問題作『シャドーメーカーズ』もマニアの間では有名なのだが、これまた音楽はモリコーネであり傑作とまではいわないが良い作品である。

夕陽のギャングたち

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セルジオ・レオーネ再登場。これはワンスアポンアタイム三部作の2作目である。
舞台は革命前夜のメキシコ。主人公は謎の爆弾魔を演じるジェームズ・コバーンと野盗の首領ロッド・スタイガー。彼らはひょんなことで意気投合し、さらに行きがかりで革命運動に巻き込まれることになる。よくできたバディムービーでもある。
コバーンはかつてアイルランド独立運動に関わったことが示唆される。またそこで手痛い裏切りにあったことも。そして例によって回想シーンはモリコーネの切ないメロディが重ねられて無駄に泣きそうになってしまうのだ。
コバーンはかつて裏切られた痛手からか常にニヒルな態度を崩さない。


しかし終盤になって感情をあらわにして名セリフを残す。

ダイナマイトをやり始めたころはいろんなものを信じていた、すべてだ!だが今はもうダイナマイトしか信じない。誰かを裁くつもりもない。

よくわからないがコバーン様かっこよすぎるだろ。涙腺崩壊する。
最後にみなが誇りを取り戻していく姿もかっこいい。男がかっこよすぎて泣くこととかあるとは知らなかった。

そのようなわけで、男気に触れたい人、男泣きしたい人におすすめである。

これがションションションで有名なテーマ曲。粗野な男たちの物語なのにこんなお上品に演奏されているのはなんとなく草生えますね。

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モリコーネらしい郷愁を誘うメロディとジェームズ・コバーンのかっこよさが絶妙の組み合わせとなっており、モリコーネの作品群のなかで一番好きと自信を持って言える。イタリア語や日本語の吹き替えもいいけど、コバーン様の生セリフが聞ける英語版がいちばんおすすめかな。

まとめ

いかがでしたでしょうか。他にも『アンタッチャブル』、『暗殺の詩』、『ミスターノーボディー』、『ウェスタン』、『ソドムの市』、『1900年』など忘れがたい作品もあったけど、選外になってしまった。本当に多作な人だった。オスカーとった『ヘイトフル・エイト』はまだみてないです、すみません。

この5本は全部大好きなのですが、マカロニウエスタンはちょっと苦手かもって人は、『ニュー・シネマ・パラダイス』や『ワンスアポンアタイムイン・アメリカ』からご覧になるのがいいと思います。また映画は観なくていいから音楽だけ聞いてみたいという人にはCDとかもあります。いろいろあるけどこれがバランスがとれててお手頃価格じゃないか思います。