さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

渡哲也さん亡くなってたのか(´・ω・`)

俳優の渡哲也氏が数日前に亡くなられていたらしい。
冥福をお祈りします。

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渡哲也氏といえば私はやはり『西部警察』の大門部長刑事の印象が強い。

スリムな身体にフィットしたスーツに身を包み、レイバンのサングラスをまとい、レミントンで狙撃()というあの姿は小学生の私には刺激が強すぎた。

夕方の再放送が毎日楽しみだったし、リアルタイムで観れたPart3は、NHK大河ドラマを観たがる親とよく喧嘩になったこともあって今でも良き思い出である。

いまアマプラ調べたら全話見れるようになってるじゃん。良い時代になったなあ。


映画俳優としてはあまり有名ではないけど、西武警察以前なら、深作欣二の実録路線ヤクザ映画の傑作『仁義の墓場』が印象に残っている。石原プロでの寡黙だが正義感の強いキャラとは正反対の、無軌道なやくざ者を演じている。これもアマプラで観れるんだなあ。


西部警察以降なら『誘拐』がおすすめである。
渡は引退間近の刑事で、部下の永瀬正敏とともに連続誘拐事件に挑む。
渡の娘を演じる酒井美紀は永瀬となんとなく恋仲なのだが、西部警察で大門刑事の妹大門明子を演じた古手川祐子を思い出さずにはいられない

渡哲也が永瀬正敏に終盤で言うセリフが超かっこいい。
「いいか、忘れるな。人は誰しも、一生に一度、死物狂いの嘘をつく」


死してなおその勇姿をフィルムに、人々の記憶に残し続ける俳優っていいなあと思いつつ、
今ごろ天国で石原裕次郎と再会の盃でもかわしているのかなあと想像するのであった。

エンニオ・モリコーネ個人的ベスト5

著名な映画音楽家であるエンニオ・モリコーネ氏が先日亡くなられた。享年91歳。

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モリコーネは1928年にローマに生まれ、1960年ころからマカロニウエスタンを中心に音楽を提供してきた。いまフィルモグラフィーを見ているがその数は膨大でジャンルも多岐にわたっている。140本くらいあるうち30本くらいしか観ていないが、映画として面白く、かつ音楽も印象に残っている5本を紹介したいと思う。

では第5位から。

ニュー・シネマ・パラダイス


日本でもっとも馴染みのあるモリコーネ作品ではないだろうか。映画監督として大成した主人公が、かつてお世話になった故郷の映写技師の葬儀に出席するのであるが、帰郷の途上で少年時代を回想するという設定である。こういった過去を回想する形式の物語とモリコーネは最高にマッチするのである。
モリコーネは本作品以降、『海の上のピアニスト』や、モニカ・ベルッチ出世作マレーナ』など、ジュゼッペ・トルナトーレ監督に大量に楽曲を提供した。


ノスタルジックな気分に浸りたい人におすすめ。


殺しが静かにやってくる




続いて4位。かなり初期のマカロニ・ウエスタンである。監督は巨匠セルジオ・コルブッチで、モリコーネはコルブッチにかなり音楽を提供した。寒村で野盗のいいなりになる村人らを声の出ないガンマンが守るという設定である。主人公のジャン・ルイ・トランティニヤンの悲しげな表情、マカロニとしてはありえない悲劇的な結末モリコーネの音楽は最高の組み合わせであり、強引に涙を搾り取ってくることであろう。また悪党の親玉クラウス・キンスキーのクズっぷりもいい。

というわけで世の中なんてひどいんだ、終わってるという気分になりたいかたにおすすめです。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ


ここでようやくセルジオ・レオーネ監督の登場である。レオーネは言わずとしれたマカロニの巨匠であり、コルブッチ以上にモリコーネと縁が深い。
本作は1984年に製作された、ワンスアポンアタイム三部作の3作目である。
物語は、かつてNYのユダヤ系マフィアの幹部だったロバート・デ・ニーロは仲間を裏切ったために現在は名前を変えて田舎で生活している。そこへ誰かから仕事の依頼がありNYへ舞い戻る。現在と過去を行ったり来たりしながらストーリーは進行していく。繰り返しになるが、モリコーネの音楽はこういう展開と非常に相性が良い。
なんといってもこの時期のデ・ニーロは油が乗り切っていた。『ディア・ハンター』、『レイジング・ブル』、『ゴッドファーザーPART2』など。本作でも渋すぎる演技を披露する。またかつてのマフィアのリーダー格であり良き相棒であったジェームズ・ウッズも鬼気迫る演技をみせる。


そして過去に固執するウッズと、過去は過去として処理している(しかし大事な思い出として心のどこかにしまっている)デ・ニーロの対比が、モリコーネのメロディーによって際立っていくのだ。

あとどうでもいいけど若いジェニファー・コネリーがめちゃかわいいです。

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もっとどうでもいいことですが、落合信彦大先生のおすすめでもあります。

これまたロマンティックな気分に浸りたいかたにおすすめ。

ミッション


またしてもロバート・デ・ニーロだ。
南米で布教に勤める宣教師たちと、先住民を奴隷として使役したい本国との間での揉め事についてのお話である。
18世紀後半、現在のブラジルとパラグアイ国境付近に住むグアラニー族を教化しようとジェレミー・アイアンズ神父は奮闘していた。
一方、奴隷商人のロバート・デ・ニーロは三角関係のもつれから弟を殺してしまい罪の意識から、アイアンズ神父に帰依し、信仰の道に生きることを決意する。
彼らは、アマゾンの奥地に理想郷を建設するが、これがローマ教皇庁の反感を買い、またスペイン・ポルトガル国境問題もからみ、退去を命じられる。しかしアイアンズはこれを拒否、先住民らは絶望的な戦いへと向かうことになる。
力で解決しようとするデ・ニーロと、信仰によって先住民らを導こうとするアイアンズの対決が熱い。基本的には退屈なストーリー展開なんだけど、衝撃的なラストで、観衆はデ・ニーロかアイアンズか、どちらが正しかったのか知ることになる。そこにドーンとモリコーネの音楽がかぶってきて感動を盛り上げるのである。
あまり有名な作品ではないけど、いちおうパルムドールとってる。

信仰とはなにか、良く生きるとはなにかと考えたい人におすすめである。

そして個人的にはこれがジェレミー・アイアンズのベストロールだと思っている。後年に彼は『ロリータ』で変態中年キャラを確立してしまうのだが、これも音楽はモリコーネだったりする。本当に色々なジャンルに手を出しておられた。
デ・ニーロは全盛期なのでさすがである。有名な滝登りのシーンは宣教師たちの布教への執念を感じさせる名シーンである。
リーアム・ニーソンやアイダン・クインはこのころには主役はれるくらいの俳優だったはずだが、主演二人の前に霞んでいるというか遠慮がちなのはややもったいないかも。
監督のローランド・ジョフィは本作よりも、アカデミー賞を受賞した『キリングフィールド』のほうが有名かもしれない。また原爆をあつかったために日本未公開の問題作『シャドーメーカーズ』もマニアの間では有名なのだが、これまた音楽はモリコーネであり傑作とまではいわないが良い作品である。

夕陽のギャングたち

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セルジオ・レオーネ再登場。これはワンスアポンアタイム三部作の2作目である。
舞台は革命前夜のメキシコ。主人公は謎の爆弾魔を演じるジェームズ・コバーンと野盗の首領ロッド・スタイガー。彼らはひょんなことで意気投合し、さらに行きがかりで革命運動に巻き込まれることになる。よくできたバディムービーでもある。
コバーンはかつてアイルランド独立運動に関わったことが示唆される。またそこで手痛い裏切りにあったことも。そして例によって回想シーンはモリコーネの切ないメロディが重ねられて無駄に泣きそうになってしまうのだ。
コバーンはかつて裏切られた痛手からか常にニヒルな態度を崩さない。


しかし終盤になって感情をあらわにして名セリフを残す。

ダイナマイトをやり始めたころはいろんなものを信じていた、すべてだ!だが今はもうダイナマイトしか信じない。誰かを裁くつもりもない。

よくわからないがコバーン様かっこよすぎるだろ。涙腺崩壊する。
最後にみなが誇りを取り戻していく姿もかっこいい。男がかっこよすぎて泣くこととかあるとは知らなかった。

そのようなわけで、男気に触れたい人、男泣きしたい人におすすめである。

これがションションションで有名なテーマ曲。粗野な男たちの物語なのにこんなお上品に演奏されているのはなんとなく草生えますね。

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モリコーネらしい郷愁を誘うメロディとジェームズ・コバーンのかっこよさが絶妙の組み合わせとなっており、モリコーネの作品群のなかで一番好きと自信を持って言える。イタリア語や日本語の吹き替えもいいけど、コバーン様の生セリフが聞ける英語版がいちばんおすすめかな。

まとめ

いかがでしたでしょうか。他にも『アンタッチャブル』、『暗殺の詩』、『ミスターノーボディー』、『ウェスタン』、『ソドムの市』、『1900年』など忘れがたい作品もあったけど、選外になってしまった。本当に多作な人だった。オスカーとった『ヘイトフル・エイト』はまだみてないです、すみません。

この5本は全部大好きなのですが、マカロニウエスタンはちょっと苦手かもって人は、『ニュー・シネマ・パラダイス』や『ワンスアポンアタイムイン・アメリカ』からご覧になるのがいいと思います。また映画は観なくていいから音楽だけ聞いてみたいという人にはCDとかもあります。いろいろあるけどこれがバランスがとれててお手頃価格じゃないか思います。



クリストファー・ノーラン『ダンケルク』見たんだ

ちょっと前に『ダンケルク』見た。

ドーバー海峡のフランス側のダンケルクに追い詰められた英仏連合軍を救出しようとする人々の話で、ウィンストン・チャーチルとも重なる題材である。



逃げ場のない海岸で独軍に肉薄される地上波は地獄であるが、戦闘機で旋回するスピットファイアのコックピットの中は静謐そのものであり、その対比がいい。

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また英国の港町から救出に向かう民間人たちも静かだ。
船乗りも戦闘機乗りも静かなのだが男気に溢れている。自分よりも大きなものに命を捧げるというのに。あるいは死を覚悟した人間とはそういったものなのかもしれない。

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時間が行ったり来たりするのもノーラン監督ならお手の物で安心してみていられる。特に混乱することもない。


もうこの歳になると過剰な演出の横行する映画を観るはしらけるし、それが私が邦画を観るのをやめてしまった理由の一つでもある。近年のイーストウッドのような静かだが、なにか迸るものがある作品が好きになってしまった。まあ単純に盛り上がれるアクション映画もいまだに大好きなので、無理やり感動させようとする演出が嫌いなだけなのだろう。



まったくどうでもいいが、50年前にフランスでダンケルクという映画が、ジャン・ポール・ベルモント主演で製作されている。原題はぜんぜんちがうけど、なんとなくこれも見てみたいなあと思ってしまった。

『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』観てきた

ようやく『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』(Ep9)を観てきた。
1984年ににジェダイの復讐(Ep6)を劇場鑑賞してからもう35年が経過している。ようやく完結である。

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内容としてはEp4-8の総まとめといったところで、Ep1-3はなんだったのかと思ってしまう。

特にEp5・6のみにしか登場しないランド・カルリジアンの再登場と活躍は嬉しかった。


終わったんだなあという感慨で胸がいっぱいになったのだが、Ep4-6に特に思い入れのない人には普通の映画だったかもしれない。
なんせ主人公の女の人が強すぎるので。。。そのわりには流砂に飲み込まれてみたりとか。。。

あと『マリッジ・ストーリー』が高評価のアダム・ドライバーはすっかり貫禄を身に着けていて良い感じだった。

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これからはいくらかスピンオフが出てくるだろうし、ローグ・ワンのような傑作ならもちろん大歓迎なのだが、自分の中では一区切りついた。関係者の皆さんおつかれさまでした。

『アウトロー』みたよ

DVDレコーダーの録画リストに残ってた『アウトロー』とかいうタイトルの映画を正月からみていたのであるが、クリント・イーストウッドの『アウトロー』ではなかった。トム・クルーズのやつである。

無差別狙撃事件がありイラク帰りの狙撃兵ジェームズ・バーが逮捕される。イラク民間軍事会社にたいして同様の事件をおこしていたからだ。バーは元陸軍憲兵トム・クルーズを呼んでくれと検事と刑事に依頼する。その後、バーは護送中に他の受刑者に暴行されて昏睡状態となる。クルーズは事件の不審な点に気づき担当の弁護士のロザムンド・パイクとともに調査を開始するのだった。


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あいかわらずトム・クルーズは超人的に強いのだが、プロットが面白いのでそこは鼻につかない。またロザムンド・パイクのおっぱいが気になって途中からプロットなどどうでもよくなるのだが。また悪役で登場するベルナー・ヘルツォークがいかにも東欧の極悪人といった趣でドキドキした。てーかヘルツォークってこんな容貌だったのね。

狙撃手としてクルーズをサポートするロバート・デュヴァルもいい感じ。かつて数々の名作アクションに出演したこの人も、すっかり名老優になってしまった。そしていまだに活躍してるってのが嬉しいね。

ハワード・ホークスの佳作『赤い河』

ハワード・ホークスは西部劇の巨匠というイメージがあるが、思いの外少なくて、以前に紹介した『リオ・ブラボー』のほか、『リオ・ロボ』、『エル・ドラド』、『赤い河』くらいである。しかしいずれも傑作、神話といってよいものだ。

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これらの作品群のなかで最も時期が早いのが『赤い河』である。ジョン・ウェインのベストロールに推す人も少なくない。

南北戦争終結後のテキサスで大牧場を築いたジョン・ウェインだが、南部の人々は貧しく近隣に牛を高く売れる市場がない。ということで仲買商人の待つ鉄道駅ミズーリまでロングドライブを行うことになる。先住民に家族を殺されたためにウェインが幼い時から育てているモンゴメリー・クリフト、長年の相棒で炊事係のウォルター・ブレナン、その他大勢の牧童ら、そして1万頭の牛とともに旅立つのであった。しかし道中は困難を極め、牧童たちは不満をためていくのだが、ウェインはこれを強権的に抑え込む。そしてついにモンゴメリー・クリフトがクーデターを起こし、ウェインを追い出してより近くのアビリーンを目指すのであった。カンザスのアビリーンまで鉄道が来ているとの噂はあるが、果たしてどうなるのか、、、

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なんといっても全てのカットが美しい。牛や馬が巻き上げる砂埃と雲と荒野のコントラストはモノクロならではだ。強権的な父であるウェインと、合理的な養子クリフトの対決シーンが素晴らしい。そして中盤でのスタンピード(牛の暴走)は大迫力だ。

初期のキャトルドライブがいかに過酷なものであったかを知るのにも貴重な作品であるが、名脇役ウォルター・ブレナンのおかげで過酷な中にもユーモアがあり楽しく見られるのだ。

紅一点のジョーン・ドルーは美しいが、『黄色いリボン』に比べるとやや劣るか。

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本作もAmazon Primeでただで観れる。そしてコントラストがより深くでるモノクロフィルムの素晴らしさを多くの人に知っていただきたい。

『掠奪の町』グレン・フォードとウィリアム・ホールデンがやたら若い

スターチャンネルに加入していたころに録画していたのが残っていたので観た。略奪ではなく掠奪であり、街ではなく町である。とりたててどうこういうような作品でもないのに、スターチャンネルは芸が細かいね。

本作は南北戦争に敗れた二人の若者が、一人は牛牧場で出世し、一人は牛泥棒団で頭角を現すというものだ。親友が敵味方に別れるという悲劇的な要素もあるのに湿っぽいところが少しもないのが1950年代らしい。

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グレン・フォードウィリアム・ホールデンがとにかく若い。グレン・フォードはともかく、ホールデンワイルドバンチとかタワーリング・インフェルノとかでさんざん観てきたのに声を聞かなければ誰だかわからない。相貌失認の気があるのではないかと心配になった。

胡散臭い歯科医が下手くそな歌と踊りをやたらと披露するのだがやや理解に苦しむところである。父を殺されて牧場主になってしまったヒロインがフォードとホールデンの間を行ったり来たりするのも唐突な感じがするのだが、これも1950年代ハリウッドらしさなのであろうか。