さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

ハワード・ホークスの佳作『赤い河』

ハワード・ホークスは西部劇の巨匠というイメージがあるが、思いの外少なくて、以前に紹介した『リオ・ブラボー』のほか、『リオ・ロボ』、『エル・ドラド』、『赤い河』くらいである。しかしいずれも傑作、神話といってよいものだ。

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これらの作品群のなかで最も時期が早いのが『赤い河』である。ジョン・ウェインのベストロールに推す人も少なくない。

南北戦争終結後のテキサスで大牧場を築いたジョン・ウェインだが、南部の人々は貧しく近隣に牛を高く売れる市場がない。ということで仲買商人の待つ鉄道駅ミズーリまでロングドライブを行うことになる。先住民に家族を殺されたためにウェインが幼い時から育てているモンゴメリー・クリフト、長年の相棒で炊事係のウォルター・ブレナン、その他大勢の牧童ら、そして1万頭の牛とともに旅立つのであった。しかし道中は困難を極め、牧童たちは不満をためていくのだが、ウェインはこれを強権的に抑え込む。そしてついにモンゴメリー・クリフトがクーデターを起こし、ウェインを追い出してより近くのアビリーンを目指すのであった。カンザスのアビリーンまで鉄道が来ているとの噂はあるが、果たしてどうなるのか、、、

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なんといっても全てのカットが美しい。牛や馬が巻き上げる砂埃と雲と荒野のコントラストはモノクロならではだ。強権的な父であるウェインと、合理的な養子クリフトの対決シーンが素晴らしい。そして中盤でのスタンピード(牛の暴走)は大迫力だ。

初期のキャトルドライブがいかに過酷なものであったかを知るのにも貴重な作品であるが、名脇役ウォルター・ブレナンのおかげで過酷な中にもユーモアがあり楽しく見られるのだ。

紅一点のジョーン・ドルーは美しいが、『黄色いリボン』に比べるとやや劣るか。

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本作もAmazon Primeでただで観れる。そしてコントラストがより深くでるモノクロフィルムの素晴らしさを多くの人に知っていただきたい。