ジョン・フォード騎兵隊三部作『アパッチ砦』
西部劇は1970年ころからジャンルとしては終焉しつつあり、『ソルジャー・ブルー』はその象徴ともいうべき作品であった。
これからしばらくはそういう楽しくない西部劇のことは忘れて黄金時代の作品について書いていきたい。とりあえずジョン・フォードの騎兵隊三部作から始めよう。これらも神話といって良い作品群である。その一作目は『アパッチ砦』である。
ストーリーはヘンリー・フォンダ演じるサーズデイ中佐が娘とともに辺境の砦に赴任するところから始まる。中佐は功名心の強い男でここで武功をあげて出世しようと目論み、隊員に厳しい訓練、規律を課すのであるが、先任大尉のヨーク(ジョン・ウェイン)らと半目するようになる。ある日、アパッチ族が居留地から逃亡したとの情報を受け、サーズデイ中佐は出撃する。インディアンに詳しいヨーク大尉は地形をみて突撃は自殺行為であると上申するがサーズデイは受け入れず、四列縦帯で突進して包囲され全滅してしまうのであった。
いうまでもなくサーズデイ中佐のモデルは、リトルビッグホーンの戦いで全滅させられたジョージ・カスター将軍である。フォンダはこの嫌味だが、誇り高い軍人を見事に演じきった。まあインディアンをなめきってるところは紋切り型な感じがしなくもないが、自分の娘と若い士官の恋を邪魔するところなどは可愛らしくて良い。
ジョン・ウェインは若くてかっこいいものの、印象に残るのはフォンダのほうである。
見どころは砦の生活である。ジョン・フォード組常連のヴィクター・マクラグレン(『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』の監督アンドリュー・V・マクラグレンの父)らのふざけ合いはフォードが好んだ軍隊のホモソーシャリティであり、安定感のある楽しさだ。また男女が正装しての舞踏会はモノクロ映画らしい活力にあふれている。
他にも荒野を騎馬で移動などフォードらしさにあふれるシーン満載で非常に好きな作品なのである。アマゾンプライムビデオにも収録されているのでぜひ見ていただきたい。