さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

ある意味西部劇を終わらせた問題作『ソルジャー・ブルー』

先日はアメリカ先住民に親和的な西部劇『小さな巨人』について紹介した。

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1970年製作の『ソルジャー・ブルー』もベトナム戦争におけるソンミ村虐殺事件への痛烈な批判である。題材は悪名高いサンドクリークの虐殺である。私がこれを初めて見たのは高校生のときで、テレビで深夜に放映していたのをなんとなく見てしまったのだが、本当に胸クソ悪い一作だ。DVDのパッケージには「ラスト15分、けっして目をそらしてはならない」と書いてあるが、はっきり言って初見時は正視にたえなかった。

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ストーリーはシャイアン族とともい暮らしていた白人女性クレスタを騎兵隊が砦まで護送するところから始まる。バフィ・セント・マリーによるオープニングが切ない。

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そこへクレスタの夫であったと思われるシャイアン族の「まだら狼」らが襲撃、騎兵隊は全滅してしまう。クレスタと側衛に出ていたホーナスのみが生き残るのであった。映画はここからえんえんとうぶなホーナスにクレスタが先住民の歴史と文化についてレクチャーする場面が続く。またホーナスの負った傷をインディアン風の薬草で手当してあげるシーンなどもあるうちに、二人は男女の仲になるのであった。バックグランドのまったく異なる二人が惹かれ合っていく姿はとても美しい。


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しかし蜜月は長くは続かない。インディアンに武器を売ろうとする武器密売人と一戦を交えて負傷し動けなくなったホーナスを救うため、クレスタは砦へと向かった。しかし彼女はほぼ丸腰のシャイアンの野営地を騎兵隊が襲撃する計画であることを知り、そのことを伝えるために集落へと戻った。まだら狼は彼女の報せを受け、和平を受け入れることを決意するのであった。

一方、騎兵隊に救出されたホーナスは集落の襲撃に随行するが、戦士などほとんどおらず、女子供老人ばかりの集落を無差別に殺しまくる場面を目撃することとなる。このラスト15分の虐殺シーンが衝撃的だったのであり、西部開拓史の暗黒面がさらされてしまった以上はもはや西部劇はかつての姿ではいられなくなったのである。ソルジャー・ブルーとはもちろん騎兵隊のことである。騎兵隊といえば襲ってくるインディアンをやっつけるかっこいい存在として描かれることが多かったが、そんな時代に終わりを告げたのだ。

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クレスタを演じたキャンディス・バーゲンはコメディエンヌの印象が強いのだが、昔はこんな硬派な美人だったんだなあ。彼女は我らがマックイーンとは『砲艦サンパブロ』で共演しておりここでも普通に美人を演じている。シットコムの人という印象は後世のものだったんだね。