さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

書評

『若者殺しの時代』

若さは特権とか最大の資産といわれるが、若者が得する時代もあれば損する時代もある。もちろん個体差も大きい。本書は個別の事情は脇において、一般的に若者が得であったのは昭和後期から昭和の終わりくらいで、現代は損する時代であるとする。そしてその画…

『学力の経済学』

教育の効果についてさまざまな経済学的な研究を紹介する本。世の中にはこんなことを研究してる人もいるんだなあと感心した。まずは子供を褒美で釣るのはよいか? 結論は結果ではなくインプットにインセンティブを与えるべき。そしてそれは内的インセンティブ…

『損する結婚 儲かる離婚』は結婚する前に読むべし

恋愛工学で有名な藤沢数希氏の主に離婚について書いた本。最近、知り合いが離婚騒動に巻き込まれたようで久しぶりに読み直したのだ。内容は離婚にまつわる婚姻費用、養育費、財産分与、慰謝料などの問題から始まる。離婚に関わったことのある人間なら誰でも…

ラカンの入門書

若いころからラカンは避けて通ってきた。なんか用語が独特でわかりにくいから。しかし分析ツールというか、もののたとえとしてラカンを用いる本が多すぎて一回はあんちょこ本でもいいから触れておかないとなあってアラフォーにして思い至ったのである。いく…

千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』の感想。

新刊『物語は人生を救うのか』が話題の千野帽子さんの前著。けっこうおすすめされていたので読んだのだが、新刊に備えておさらい。平易に書かれていて、一気に読めるのに奥が深い。以下、ざっとして私の理解にもとづく感想文。一貫性を担保するものとしての…

呉善花『韓国併合への道』を読んで

なにやら例の隣の国とのゴタゴタがかつてないほどにエスカレートしているようなので積ん読になってた本書をようやっと読んだのである。知日派の韓国人(現在は日本国籍)である呉善花氏による韓国近代史の新書。おすすめしている人がけっこういたので買ったの…

『仕事ができて、小金もある。でも、恋愛だけは土俵にすら上がれてないんだ、私は。』

ながらく恋愛系ブロガーとして活躍しておられる桐谷ヨウさんの女性向け恋愛指南書。凡百の恋愛本と異なり、コミュニケーション論といった趣があり、男性やすでに結婚している人たちにもおすすめできる一冊だ。なによりチャラさと優しさの同居した語り口がい…

水野敬也『スパルタ婚活塾』は30過ぎの婚活女性必読

本書は大ヒットした男性向け恋愛マニュアル『LOVE理論』の女性版である。対象は適齢期をすぎてしまったやや厳し目の女性のようだ。水野敬也さんらしい厳しくも楽しい語り口が本書の醍醐味で嫌味を感じることなくスイスイ読める。また男性目線で語られている…

『帳簿の世界史』感想

会計や帳簿という観点から世界史(正確には西洋史だが)を見直すという非常に興味深い書物。多数の絵画を引用しており、楽しく読める。以下は読書ノート。 古代より会計がおこなわれていたが、ローマ皇帝アウグストゥスが帳簿を公開して自らの偉業を誇示した。…

『途上国の旅 開発経済のナラティブ』読書ノート

著者らは世界銀行、ODAなどで途上国の開発にかかわるなかで、初期条件が異なれば処方箋も異なるという当たり前の事実をナラティブベースでつまり、新古典派などのモデルに依らずに語る。11カ国の物語は非常に多様でその意味がよくわかる。 経済発展は政治制…

『感じて、ゆるす仏教』さらっと感想

ニー仏こと魚川祐司さんと、日本を代表する高僧であるところの藤田一照さんの対談。話し言葉主体なので読みやすいがけっして平易というはわけではない。作中で「 命令してコントロール する系の仏教と、「 感じて、ゆるす系」の仏教といった対比がたくさん出…

『いま世界の哲学者が考えていること』の紹介

『いま世界の哲学者が考えていること』についてざっくり紹介する。内容は第1章以外は平易でブックガイドとしてまた世界で議論になっている事柄の見取り図としてよくできていると感じた。第1章は哲学・思想の潮流について、構造主義、ポストモダニズムについ…

『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』の感想

久しぶりに松尾先生の本をお買い上げ。驚いたのは松尾先生がオリンピックが終わるころには完全雇用に至りインフレが始まるという極めて楽観的な見たてをしていること(これはもちろん消費税増税がされないという前提なのだが)。そしてそれは追加的な労働力…

『War against Boys(少年たちに対する戦争)』はよ邦訳だして

アメリカのフェミニズム批判として著名な作品。どうして邦訳されないのかと思ってたが、アメリカのフェミニストあたまおかしすぎで、日本人にはちょっと参考にならんからだとわかった。アファーマティブ・アクションの名のもとに女子を優遇したり、ジェンダ…

やり抜く力 GRIT(グリット)

ベストセラーになった自己啓発もの。 努力を継続することが大事ということが繰り返し繰り返し書いてある。 そのためには小さいときに課外活動、要は部活をすることが大事らしい。それもできれば2種類以上がいいらしい。本書で引用されている伝説的なクォータ…

『金持ち課税』感想

多くの経済左派を絶望におとしいれた『金持ち課税』のいまさらながらの感想。帯にアンガス・ディートンが、本書を読めば再分配税制で貧困が解決しそうにないことがわかるよって書いてて、読んだら本当にそのとおりで草生えた。内容は戦後に各国で強力な累進…

選挙の日なので『経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策』の感想でも。

緊縮財政が厄災をもたらすというのは当たり前のことだが、本書の著者らの専門は公衆衛生であるのが特徴。大恐慌期のアメリカでニューディール政策への対応が各州で異なったこと、アジア通貨危機でIMFの勧告に従った国とそうでなかった国があったこと、リーマ…

『矛盾社会序説』の今更ながらの感想

きもくて金のないおっさん(KKO)界隈の著名人、白饅頭こと御田寺圭さんのデビュー作。20年後、団塊ジュニア=就職氷河期世代がリタイアし始めるころには爆発すること必至のKKO問題について今のうちから知っておくことは悪いことではない。資産も家族もないこ…

『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』の感想

哲学者の千葉雅也、現代美術家の柴田英里、AV監督の二村ヒトシの3人による鼎談。Twitterでよく燃えるジェンダーや欲望や表現規制の話題を柴田が揶揄して、二村が別の視点を提供し、千葉が整理するという形式でそれらの多くはツイッターなどでさんざん語られ…

『ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』

一時期すごく話題になったニック・ランドのブログの中の人のデビュー作。 toshinoukyouko.hatenablog.com 昨年夏、『Taxing the Rich』の邦訳がでて多くの友人達が絶望におちいっていくころにこのブログにでくわした。 加速主義、新反動主義を紹介するこの記…

『時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか』感想

著者はフランクフルト学派に由来する社会学者によるおもに新自由主義批判の書。 1970年代に入ってからの経済成長率の鈍化による税収の伸び悩みから、政府の債務が増加する。また新自由主義の伸長による減税もこれに資することになる。規制緩和や民営化により…

アウトプット大事だよね

はてなダイアリー長いことほったらかして、書くことといえばTwitterで短文を書き散らかすだけのここ数年だった。書くことが億劫になってしまっていけない。ということで『アウトプット大全』とかいう意識高そうな本を買ってみた。売れている本だけあって、楽…