さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』の感想

久しぶりに松尾先生の本をお買い上げ。

驚いたのは松尾先生がオリンピックが終わるころには完全雇用に至りインフレが始まるという極めて楽観的な見たてをしていること(これはもちろん消費税増税がされないという前提なのだが)。そしてそれは追加的な労働力として移民が必要という認識につながる。つまり土建手動で完全雇用になると介護のような低賃金労働につく人がいなくなってしまうと本気で心配しているのである(まあこれは1年半くらい前の予想で、米中関係のような外生的な要因は考慮されておらず、現在はもっと悲観的な見方をされているとおもう)。

前から知ってたけど、松尾先生のような政治左派経済左派は財政拡張を介護や福祉に使いたがるし、異様に土建を嫌っている。よくいわれることだが古い自民党的なものがいやなんだろう。政治右派経済左派が土建ジアンであったり移民を好まないのと対照的。こんだけ自然災害の多い国で土建が多くなるのは当然のことだろう。人が大事だからコンクリートが必要になるのに。もちろん好況になると高齢者の死亡率が高くなるのはよく知られており、人とコンクリートトレードオフの面もあるのだが。

全体としては松尾先生やブレイディ氏のいうレフト2.0、たとえば第3の道とか呼ばれたものが、ネオリベラリズムと極めて相性がよかったという認識は、ナンシーフレイザーフェミニズムネオリベラリズムの婢女になったという指摘と相似であると思われる。
それらを踏まえた上でレフト3.0を目指すべきというのが論旨で、それは政治左派はアイデンティティポリティクスだけでなく経済という下部構造を重視すべき、ということ。まあその指摘は正しい。

おまけとしては、北田暁大という人は、ツイッターで素人にタコ殴りにされてる残念な社会学者、というか残念でない社会学者とかあんまり見たことないけど、思ってたよりはマトモだった。