さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』の感想

哲学者の千葉雅也、現代美術家の柴田英里、AV監督の二村ヒトシの3人による鼎談。

Twitterでよく燃えるジェンダーや欲望や表現規制の話題を柴田が揶揄して、二村が別の視点を提供し、千葉が整理するという形式で

それらの多くはツイッターなどでさんざん語られてきたことだけどいくつか知らないことがあった。
たとえば心の傷は本来は極めて個人的な経験であって他者とは共有も交換もできないものなのに、me tooでは交換可能なものとして語られており資本主義的であるなど。トラウマをSNSなどで共有することが無意識や象徴界を消滅させていることなど。

あとは世の中が共感に傾きすぎていないかという話。よくおもてになる友人らはよくいうのだが、女の子を口説くのに言葉はほぼ関係ない、共感してノリを合わせればいいと。それって極めて動物的だなあと思う。そう共感って人間的にみえてその内実は野性的な本能に近い。SNSがそういう動物化に寄与してるのはなかなか興味深い。

しかしそんなことよりも、ガチの人文の人である千葉雅也がリベラル、ポリコレ、フェミニズムの恫喝性、保守性をはっきり認めて、それとは距離を取ると言っていることの重さだ。これは新反動主義がいまさら日本で取り沙汰されていることも関係している。

あと全然関係ないけど、千葉が女なんてめんどくさい、セックスするだけならゲイのほうがらくだよって言っててわろた。彼の本とか読んでもさっぱり理解できないのだけど、こんな調子なので本書はさくさく読めた。