さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

『ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』

 一時期すごく話題になったニック・ランドのブログの中の人のデビュー作。
toshinoukyouko.hatenablog.com

 昨年夏、『Taxing the Rich』の邦訳がでて多くの友人達が絶望におちいっていくころにこのブログにでくわした。
 加速主義、新反動主義を紹介するこの記事に感銘をうけ、いろいろな本を読んだ。
 なかでもウォーリック大学でニック・ランドに近いところにいたマーク・フィッシャーの『資本主義リアリズム』は本質らしきものがあった。

 新反動主義や思弁的実在論はながらく人文学がみないふりをしてきた不都合な実在性に着目するものだ。まあ国家社会主義者からすれば言わずもがななところもあるけどね。
 とはいうものの人文学でこういうPCでない立場はアカポスとりにくいだろうに、一潮流にありつつあるというのは間違いなく時代が変わりつつある。
 千葉雅也らの『欲望会議』はそういう文脈のなかにあり、現代思想最新号の千葉雅也、仲山ひふみ、小泉義之の対談ももろにそうだ。

 そういうモメンタムがあるなか、今年にこのブログ主の著書がでるというわけだ。
 内容は前半はダークウェブ、デジタル署名などの説明に始まり、ダークウェブの奇人変人、都市伝説の紹介である。知ってる人にはいまさらな事柄なのかもしれないが、門外漢には楽しいものであった。
 後半からはニック・ランドに始まる新反動主義の人脈やそこから派生した加速主義の紹介だ。さらにはオルタナ右翼インセル、MGTOWにまで話は広がる。これらを一気に紹介する筆力はかなりのものだ。