さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

『時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか』感想

 著者はフランクフルト学派に由来する社会学者によるおもに新自由主義批判の書。
 

 1970年代に入ってからの経済成長率の鈍化による税収の伸び悩みから、政府の債務が増加する。また新自由主義の伸長による減税もこれに資することになる。規制緩和や民営化により民間の債務も増大する。金融危機のさいには政府は金利引き下げや不良債権の買い取りなどを通じて資産階級を保護する。こうやって危機は先送りにされる状態を時間稼ぎといっているのである。

 その一方で労働者は不完全雇用による発言力の低下、生活の不安定化により弱体化する。1960年代の労働者階級の台頭を恐れ、コントロールを失いたくない資産階級はこういった状態を維持する。

 政府はもはや国民の利益を代表しているとはいえず、民主主義は機能不全におちいっている。民主主義で情況を変えられないのであれば、もっとちがう手段も必要かもしれない。

 とまあこんな調子です。同意できるところは多々あるし、ユーロをぼろくそに批判しているのも面白いし、最後のほうでは暴力闘争をほのめかすようなことを言ってるのも興味深いんすけど、しかし国債とか税金を財源調達の手段と考えているふしがあったり、政府の債務を返済すべきものと思っていたりするのがひっかかるにだなあ。資本主義を終わらせることを考えるとどうしても負債はなくしてしまいたくなるんだろうか。