さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

ラカンの入門書

若いころからラカンは避けて通ってきた。なんか用語が独特でわかりにくいから。しかし分析ツールというか、もののたとえとしてラカンを用いる本が多すぎて一回はあんちょこ本でもいいから触れておかないとなあってアラフォーにして思い至ったのである。いくつか入門書を読んでみたが一番わかりやすかったのがこれ。

精神科医斎藤環氏による入門書。日本一わかりやすいラカン入門をめざして書いたというだけあって懇切丁寧である。なぜいまラカンなのか?から始まって(生き延びるためと大仰にうたっているので当然かな)、シニフィアン、エディプスコンプレックス、対象aなど基本的な概念をわかりやすく解説してくれる。特に映画『マトリックス』を用いた象徴界(コード垂れ流しの映像)、想像界(マトリックス)、現実界(ザイオンなど)の説明はとても直感的でわかりやすく、このためだけでも買う価値があると思われた。さらに入門書としてとても大事なことであるが、読むのに時間がかからない、さらりと読める。

もう一冊よかったと思ったのは『疾風怒濤精神分析入門』である。こちらはもう少し実際の精神分析に即した形で書かれていてそれはそれで面白い。ラカンの理論についてもなるべく誤解の余地のないように書かれいている。もちろんそのぶんだけわかりやすさが犠牲になるのだが、読みすすめるのが辛いというほどではない。とはいっても上の斎藤氏の入門書で概略を掴んでから本書に進んだからそれなりに理解できたというのはあるだろう。そしてこの本は薄くてすぐ読める。いま3回目を読んでいるところだ。

これらの本を読んだからといってラカンを理解したことにはならないが、なにかの本でラカンに言及しているときに拒否反応をおこして飛ばしてしまうなんてことはなくなるだろう。本当はこういう勉強は20代のうちに済ませておかなければいけなかったんだけどね。