さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

選挙の日なので『経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策』の感想でも。

緊縮財政が厄災をもたらすというのは当たり前のことだが、本書の著者らの専門は公衆衛生であるのが特徴。

大恐慌期のアメリカでニューディール政策への対応が各州で異なったこと、アジア通貨危機IMFの勧告に従った国とそうでなかった国があったこと、リーマンショック後の各国の対応の違いがあったことなどから、期せずして社会実験が行われることになり、結果はもちろん緊縮財政の負けなわけである。

公衆衛生についての豆知識が増えたのもよかった。不況ではたいてい自殺は増えるけど、その他の死亡は減ることがある。例えば飲酒や外食を控えるようになったり、大恐慌期は自動車の利用が減ることで交通事故死が減ったりした。などなど。

フィンランドでは失業者を積極的就労支援群とあっさり支援群にランダムにわりつけてうつ病の経過をみるという倫理的にどうなのかと思われる試験がおこなわれ、前者のほうが成績がよかったと。それをふえまえて著者らは欧州各国の失業対策とうつ病の関連を解析したところ、積極的就労支援が失業手当や医療サービスよりもはるかに効果が高かったとのこと。

当たり前のこともこうやって統計でもって示すのはとても大事なこと。しかし残念なのは耳を貸す人はとても少ないということだ。それを今夜の参院選の開票結果で確認することになろう。