さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

西部劇とはなんなのか

そもそも西部劇ってなんなのかというと、19世紀後半のアメリカ合衆国中西部を舞台にした映画だ。ほとんどは南北戦争後から1890年のフロンティア消滅宣言までを舞台にしている。
映画の黎明期から西部劇は制作されている、一番初めのは1903年の『大列車強盗』とされる。『明日に向かって撃て』で有名なブッチ・キャシディサンダンス・キッドの強盗団をモデルにした作品である。実在のキャシディとサンダンス・キッドボリビアで射殺されたとされるのは1908年であるからして、まだまだ西部劇の舞台となった時代と地続きだったわけである。
最後の西部劇、というか1980年代には全盛期の勢いを完全に失っていたこのジャンルにとどめを刺したのはクリント・イーストウッドの『許されざる者』であるのは有名な話だ。オードリー・ヘップバーン主演の同名作品と間違えないように注意されたい。こちらも佳作ではあるが完全にマニア向けの西部劇である。
ジャンルとしての勢いを失った1980年代にも細々と西部劇を作り続けていたイーストウッドが西部の実像、虚像をありのままに描いてみせた本作はまさにとどめを刺したという表現がぴったりであった。もちろんその後も19世紀後半のアメリカを舞台にした作品は多くはないけど作られている。アン・リーシビル・ガン』(公開時の邦題は『楽園をください』)のような傑作もいくつかあるのだが、かつての西部劇とはなにか違うのである。

私が観た西部劇のなかで一番古いものはなにかと調べてみたらラオール・ウォルシュ『ビッグ・トレイル』(1930)であった。いわゆる幌馬車隊ものの大作である。ジョン・ウェインがめちゃ若いこと、荒野をいく長大な幌馬車隊が壮観であったこと、爆走するバッファローの迫力をよく記憶している。こういう荒削りな自然とか動物の映像の質感は現代の映画には観られないもので、古い西部劇の魅力のひとつである。あと好事家の間ではタイロン・パワー・シニアのほぼ唯一のトーキー作品ということでも知られている。