さよなら独身貴族 西部劇編

西部劇、戦争映画、時代劇について書いていくブログ。たまに書評。

西部劇が本格的に始まるのは?

一番最初の西部劇は先日紹介したとおり1903年の『大列車強盗』であった。これは映画草創期の作品全般にいえることだが、ほとんどが短編で長くても60分くらいだった。1920年代終わりに映像と音声を同期した、いわゆるトーキーの長編が商業ベースに乗るようになる。このころから現代にも名を残す西部劇がいくつか作られている。先日とりあげた『ビッグ・トレイル』もそのひとつであるし、有名なのはジョン・フォードアイアン・ホース』だろうか。

しかし1930年代は、後に西部劇最大の巨匠とよばれることになるジョン・フォードふくめ、ほとんど長編の西部劇は撮られていない。このあたりの事情はちょっとわからない。もしかしたら大恐慌の影響かもしれない。そして本格的な西部劇の時代が始まるのは1939年である。それから1970年代まで数多くの傑作が作られることになる。その記念碑的作品であり、ジョン・ウェイン出世作となるのが1939年の『駅馬車』である。

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舞台はアリゾナ州からニューメキシコ州へと向かう駅馬車である。駅馬車に乗り合わせる人々の人間模様のあり方も後に定番となる、銀行家、売春婦、貴婦人、酔っぱらいの医者、保安官、博打打ち、お尋ね者などなど。そして荒野を行く駅馬車のかっこよさ、勇壮な騎兵隊の隊列、スリリングなアパッチ族の急襲、そしてお約束の悪党との対決、美しいモニュメントバレー。もはや様式美というほか内容であるが、ひとつひとつのショットがかっこく、丁寧につくられているために、けっして色褪せることがない。『風と共に去りぬ』と重なったためにアカデミー賞助演男優賞と作曲賞のみにとどまったが、本作によりジョン・フォードジョン・ウェインは国内外での名声を確固たるものとする。そして西部劇の黄金時代が始まるのであった。